今回も弊所あてに寄せられた体験談やご意見をご紹介致します。皆様もぜひ、ご参考になさってください。
私は、仕事上、相続や遺言の相談を受けることが多く、さまざまな場面での問題に直面してまいりました。その中からある事例をご紹介いたします。
ご主人を亡くした女性からのご相談でした。実は、ご主人は2度目の結婚で、前妻との間に生まれた3人の子供を育てていました。一番下の子が5歳でした。女性との間には子供はできず、女性はご主人の連れ子3人をわが子のように育ててきました。経済的には豊かではありませんでしたが、共働きで3人とも大学を卒業させることができました。夫婦は60歳を過ぎ、定年退職し、子供たちもそれぞれ自立したのでそれまでの東京の借家を出て、女性の実家(地方都市)の土地をご主人名義で購入し、小さいながらも家を建てて暮らしていました。
10年後、ご主人は急死しました。財産は貯蓄はほとんどなく、暮らしている田舎のこの土地と建物だけです。女性はそれを相続してこのまま住み続けたいと思いました。でも法定相続を適用すると、女性の持分は2分の1、後の2分の1を3人の子供たちで均等に分けるということになります。遺言はありません。遺産分割協議を前妻の子供たちとしなくてはならなくなりました。もし、子供たちが法定相続を主張してきたら、女性は住んでいる家、土地を売って代金の半分を子供たちに分けなければなりません。女性としては、もともとは自分の親の土地だし、住宅ローンの支払いも自分も働いてご主人といっしょに返済してきたのです。子供たちがこの田舎の家に来たことはありませんでした。それでも財産が手に入ると思えば、なんと言ってくるかわかりません。「遺言」があって、この不動産を全部妻に相続させると書いてくれてあればこんな不安に思うこともなかったのに。ご主人の急死ということと、もともと、財産がたくさんあるわけではないということで、まさか「遺言」が必要になるかもしれないなんて、ご主人は露ほども思われていなかったことでしょう。
幸い、この件では、子供たちが女性の単独相続に応じてくれたから万事丸く収まりましたが、このように解決できない例も世の中にはたくさんあります。「遺言」は金持ちがするものというのは思い込みです。主な財産が自宅の土地と建物だけという場合があとで困ったことになるケースがたくさんあります。是非、日ごろから「相続」のこと、「遺言」のこと、わがことと考えて準備しておきたいものです。残された方への思いやりとして。
ここがポイント!
お声を頂きありがとうございます。「遺言は金持ちがするというのは思い込みです。」まさしくこの投稿者の方は同業者?の方でしょうか?多くの事例をご覧になってきたからこそのご意見だと思います。それは平成25年の司法統計でも如実に現れています。相続財産が1000万円以下でもめているのが全体の33%、5000万以下で全体の43%がもめています。このお声の例のような、不動産と預貯金が少しの例が一番厄介なのです。ですからゆいごん書が必要です。ゆいごん書は、あなたの大切な人が安心するとても大切なお守りです。
宮崎県行政書士会宮崎支部
かねこ行政書士事務所
金子 聡