今回も弊所あてに寄せられた体験談やご意見をご紹介致します。皆様もぜひ、ご参考になさってください。
祖父が亡くなったときのこと。
祖母に先立たれて半年後、祖父は長男・次男・三男・長女と孫たちに囲まれて96歳で亡くなりました。
長男は農家を継ぎ、次男・三男は自営業、長女は県外で主婦をしていました。
長男は跡継ぎですから田んぼ、畑、家などを譲り受け、次男・三男の自宅と会社の土地は、数十年前に会社を興す際に祖父から格安で譲り受けたそうです。
その後、持っていた土地が次々に道路用地や工業団地などになり、ちょっとした資産家になっていた祖父。
時は経ち、長女の旦那さんが定年退職で地元に戻ってくると言うので、祖父は土地を長女にあげたそうです。
長男は、農家は趣味程度で、祖父が建てたアパートなどの家賃収入が主な収入源でした。
祖父はいつも「長男は甲斐性がないから、農家もできない」とこぼしていたらしいです。
次男・三男については、会社経営がそこそこうまくいっていたので、二人で「父が死んでも遺産は放棄しよう。ただ、妹(長女)には遺産をあげよう。」ということで意見は一致していたそうです。
そして、とうとう祖父が亡くなりました。
すると、長男が「おれはじいさんとばあさんの面倒をみたから、全部もらう。」といいだしたので、次男・三男は妹にだけは分けてやれと進言したそうです。
しかしながら、長男は頑として受け入れず、「おまえたちはみんな土地を貰っているだろう。妹は仕送りもして貰ってただろう。おれは損な役回りばかりだ。」とあれこれ言い出したのだとか。
次男・三男は腹に据えかね、「妹に分けないなら、俺たちは遺産を放棄しない。」と言ったそうです。
もめにもめたそうですが、長男は渋々ながら妹にも遺産を分配しました。
祖父が死んで、半年ほど経った後、なぜ長男がそこまで遺産に執着していたのかがわかりました。
長男は、祖父の残した家を取り壊し、息子夫婦と住むための二世帯住宅を建てたかったようです。
実家を勝手に取り壊された兄弟たちの怒りは激しく、その年の正月は顔も合わせませんでした。
家が建ち、程なくして、長男にガンが見つかりました。
家が建って一年後、長男は亡くなりました。
その際の遺産相続は、スムーズにいったそうです。
ここがポイント!
お声を頂きありがとうございます。このお声の場合は、やはりゆいごん書を遺されていた方が良かったケースですね。生前贈与もありそうですので、そこも含めてゆいごん書に記載されることが必要でした。ゆいごん書を書く際に問題となる遺留分ですが、その遺留分算定の基礎財産は、被相続人死亡時の財産に生前贈与の額を加え、相続債務の全額を控除したものです。生前贈与は、相続開始1年前以降のなされたものを言いますが、当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知ってなされた贈与、特別受益としての贈与については、期間制限はないとされていますので、生前贈与についても記載されている方が賢明です。
宮崎県行政書士会宮崎支部
かねこ行政書士事務所
金子 聡